待ちに待った、AIRのフジロック出演!ステージ上にはニコラとJB、そしてドラムは北米ツアーもサポートしていたアレックス・トーマス。いつものことながらシンプルなシャツ姿で登場。ニコラは白いストールを巻いていて、とても似合っている。そういえばエールの2人がTシャツやカットソーを着て演奏しているのは見たことがないが、想像もしたくない。
Dot the joyで幕を開け、久しぶりに堪能するエールの世界はリズムを強調して、全体的にテンポ速め。結果、ポップでコンパクトな印象を受ける。特に、RememberやHow does it make you feelといった昔の曲ではちょっとだけ違和感が…。個人的に、エールの魅力は気だるく甘いメロディとふわふわ夢心地な浮遊感だと思うのだが、今回浮遊感は少々抑え気味の様子。ただ、Tropical diseaseやDon’t be light、Sexy boyにおいてはアップテンポがマッチして新鮮。大体、Tropical diseaseなんて一歩間違えばムード歌謡に転びそうな危険なメロディ満載なのに、ギリギリのところでバランスを保っているのはさすがである。映像もハイエンドなビジュアルではなく肌のぬくもりを感じさせる独特さで、そこはかとなく漂う場末感が思いっきりパリっぽい!コンパクトに感じるとはいえ、耽美さはダダ漏れで、最後のLa femme D’argentでは、お得意のメランコリーで甘美な世界を思う存分堪能させてもらって大満足。
フレンチエレクトロ旋風の先駆けのようなメディアからの扱いに、本人達は淡々とNonと言い続けてきた。そして、実際にもシーンとは少し離れたところに居続けた。現在のフレンチエレクトロがダンス・トレンド寄りになっていくのに対し、エールはオリジナリティを貫き続けた。フジロックではその世界を愛する大勢の観客に愛を持って迎えられた。ステージでお辞儀するエールの2人にいつまでも感性と拍手がなりやまず、マーキーはアムールに包まれたのである。
彼らは以前から野外ステージでの演奏を望んでいると言っていたので、できることならグリーンやホワイトで見たかった。でも、それは次のお楽しみとしてとっておこう。山、森に映えるエールのサウンドを想像しただけでも、宙に漂ってしまいそう。
写真:熊沢泉
文:mimi