6人が奏でる魔法の音、不思議な空間に酔いしれたステージであった。
昨日のオレンジコートでの演奏も評判だったというブルックリンの男3人女3人の6人組Dirty Projectors(ダーティ・プロジェクターズ)を見ようと、レッドマーキーはかなりの人だかり。元々はこの枠はParachuteが出演予定だったのは周知の通りだが、代替でDirty Projectorsが決まった時の反応も大きかったことを思い出すと、注目されているんだなということを実感する。
インディ系ロックを骨格にして、フリーフォーク、エレクトロ、ポストロック、ソウル、クラシックなどの様々な音楽を取り込んだサウンドは、奇天烈な感性を持ちながらもポップにくるまれている。ライヴでもそれは健在で、へたうまな歌声はどこか親近感を抱かせるし、細かい音響アレンジを加えている中で、アコギの切なく甘美なメロディやキーボードの美しい煌めきが随所に光っている。弦の一本一本が共鳴を起こし、キーボードの旋律が空気に溶け、ドラムが精微に打ち鳴らされ、男女の歌声が美しく溶け合う。そんな6人の調和のとれたハーモニーが奇跡的な時間を紡いでいるのだ。それは温かく色鮮やかな風景を描いているようでもある。凝ったアレンジを施しながらもあそこまでポップネスを突き詰めれる音楽的センスには脱帽。特に「Cannival Resourse」における瑞々しい響きには、一発で惹かれる。
聴いていると、なんだろう。時間が遅く感じられたというか、時間が引き延ばされているとかそんな感覚を覚えてしまったりもした。それだけ心地よかったからだろうか。ただ、眠りを誘っているようで、じわじわと覚醒を促すかのような刺激もあって、どこか不思議な感覚に今でも陥ってる。Dirty Projectorsのライヴはどうしようもないぐらいに素敵で素晴らしいステージであった。
写真:古川喜隆
文:伊藤卓也