DJ ALEXIS TAYLOR (from HOT CHIP)

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8/2 12:05  Twitterに投稿する

DJ ALEXIS TAYLOR (from HOT CHIP)
 ますますわからない。Alexis Taylorとはどんな人物なのだろう。わけがわからないのではない。逆に知れば知るほど、謎が湧き出してくるのがAlexis Taylor。笑わない、媚びない、でも音楽に対する静かな熱さを秘めた人……。この後に続くJames Murphyへとつながる線は、実によく理解できる。Alexis TaylorだけではなくHot Chipのメンバーは、The 2 BearsやGreco-Romanといった別ユニットや、Hot Chipからは一見連想することが難しいアーティストのRemixを手がけたりと、ひとつ引き出しを開けて閉じると、別の引き出しが飛び出すという罠にはまっているのだ。

 Hot Chipのライヴの興奮冷めやらぬこちら側とは裏腹に、まったく表情の変わらない涼しい顔のAlexis Taylorがひとりぽつんと機材の前に立つ。グリーン・ステージでは、今年のフジの大きな事件、Atoms For Peaceが、そしてMassive Attackへのバトンタッチが行われている。レッド・マーキーには、人は少ない。ただ、ここへ集まった人たちは、モノ好きそのもの。さっきは気づかなかったけれど、モノクロのメデューサのTシャツ……つっこんでほしいのか、どうなのか。

 こちらフロアに目をやることもなく、ただただ淡々と、黙々と7インチレコードを手にしては、小さなツマミをキュッと上下。そして視線の先にはぐるぐると回ったレコードと、レコードの針。ミニマムなピアノの音がただただ繰り返される。日本では貴重なDJとしてのステージに、心が躍った。Alexisの元には、Hot Chipのメンバーが立つ姿もあった。Alexisが回す曲が何であるかはわからなくとも、この日のAlexisのプレイには、納得がいった。でも、さらに私はAlexis Taylorという泥沼の深みにさらにはまってしまった。わからない…Alexis Taylorという人物が理解できないのではない。謎を解き明かそうともがけばもがくほど、抜け出せない底へ底へと向かっているだけ。ただ、そのもどかしさが心地よい。Alexis Tayorという人をきちんと解明できる日が来るなんて思っていない。むしろこれからもこの泥沼感をもらたしてくれる人でいてほしい。

写真:中島たくみ
文:ヨシカワクニコ