フジロックのタイムテーブルが発表されると、当日まで、脳内でマイ・タイムテーブルが構築されていく。そこで悩ましい問題となるのが、観たいアーティストがカブるという事態。Hot ChipとLCD Sound Systemがまぁ、キレイにカブっていて、どちらかをチラ見して両方観るなんてことはできない。さて、この究極の選択を強いられた皆さん、さてあなたはどっちを選んだのだろう?
■ファッション・チェック
音楽にはファッションなんて関係ない! と言われるのもごもっとも。ファッションという言葉を完全崩壊させているのが、Alexis Taylorでもあり、目を離すわけにはいかい。「ごきげんよう、町内会長!」、今年はそんな感じできた。腰回りの丸みをカバーする大きめの白いシャツに黄色のパンツ。そしてスタッズかが不細工に施された茶色の帽子……あいかわらず期待を裏切らないセンスの持ち主、Alexis Taylor。
■アノ人がいない!
今回のステージには、Joeの姿がなかった。何もかもがアンバランスな5人の集団、Hot Chipにおいて、誰ひとりとして欠けてはならないのだけれど、ベイビーご誕生とのことで、来日できなかった模様。Joeがいない今回のフジは、他のメンバーが代わってヴォーカルを取り、本来ならジJoeのパートでは、小さなスクリーンに、どかんと口パクのJoeが映し出されるというとてもとてもレアなHot Chipだったのだ。
■確信犯のセットリスト
”And I Was A Boy From School”、”One Pure Thought”、”One Pure Thought”なんていう1st、2ndのあがること間違いなしの過去の遺産曲たちは、前半でさっさとやってしまう潔さはやっぱりHot Chipならではというのを再確認。しかもそれぞれの曲はアレンジを変え、お、次は何だ?と思わされるも、ああぁぁ!というのも実に確信犯かの如く、羽織り風にキーボードを弾いたり、ドラムを数人で乱れ打ちしたり、ちょっと手持ちの機材から離れては、ファンキーなダンスを黙々と、そして微動だにしないイメージのAlexsisはステージを降り、オーディエンスのもとによって、冷静なるハイタッチ。中盤の『One Life Stand』からの曲を経て、”Hold On”、そして”Ready for the Floor”というキラー・チューンで締めくくった。
■エレクトナログ
今回のライヴでは、サポートとしてドラムが加わっていた。ドラムが加わることにより、これまでの、Hot Chipよりもよりタイトに変化していた。これは好き嫌いがありそうなそんな予感。それぞれのメンバーの前には、黒い機材が並び、小さいツマミをミリ単位で動かし、曲となっていく。音はデジタルでも5人が譜面には現されない隙間を生めていく姿は完全にアナログ。そこへアナログなドラムが入ると、逆にデジタル特有のタイトな音に変化する不思議を目撃した。まさにエレクトロニカとアナログの融合、それこそが、Hot Chipの最大の魅力なのだ。
■そんなHot Chip
ますますAlexis Taylorという泥沼にはまる一方である。秋には、フジにも出演したLCD Soun Systemとのツアーを控えていたりで、そのパイプは簡単に想像がつく。ただ、Badly Drawn Boy、King Creosote、The Aliens、Pictish TrailそしてSteve Masonといった音楽の垣根を越えたつながりを見せてくれるのも、Alexis Taylorという人物の不思議にもつながる。笑っているのに、笑っていない。微動だにしないのに、動いている。不細工なのにカッコいい。あらゆることに対して、間逆の面を持ち備えた、Alexis Taylor、そしてHot Chipからこれらも目を離すことなんてできるわけがない。
写真:熊沢泉
文:ヨシカワクニコ