昼間からアゲアゲなテンションへ持って行ってくれたのは、奇天烈なセンスを持ったバンドを近年多数輩出しているブルックリンからの新たな刺客、Yeasayerだ。エレクトロ、ニューウェイヴ、トライバル、サイケデリック、ソウルなど様々な音楽をリンクさせ、美しい世界を紡ぎあげていく彼等の音楽の心地よさは絶品だった。
その噂を聴いて駆けつけたのか、昼間の時間帯にしては、かなりにぎわいのあったレッドマーキー。驚くべき人数から発せられる異様な大歓声と拍手に迎えられる中で、ステージに登場したのはサポート・メンバーを含めた5人(ドラムやパーカッションを担当していた2名がサポート)。基本的にはヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、パーカッションといった編成だが、キーボードやシンセを兼務している人が数人いる。曲によってはマラカスなんかもつかって、独特のサウンドと煌めきを追及している模様。
ライヴ序盤は、彼等の代名詞となりつつある80’sっぽいエレポップではなく、古めかしいサイケデリックのテイストが詰まった1stアルバムの選曲が多かった。こちらだとバンド・サウンドがしっかり根ざし、ロック成分が強い感じ。ブルージーなギターやトライバルなリズムが民族的な香りを放っていて、現在のYeasayerからはちょっと予想できない感じになっている。ただ、シンセを使った意匠が現在とリンクする部分もあり。躍動感あるリズムは当時から踊らす感性が秘められている。
だが、エレポップの要素が強いバンドとして認知していたのはおそらく自分だけではないだろう。2ndアルバムの「Madder Red」や「O.N.E.」といった曲が演奏されると盛り上がりが段違い。水を得た魚のように会場全体が弾けていた。チープな電子音と人力のサウンドが混成し合って、できあがるポップ・サイケデリアの結晶。優雅に色ついたエレクトロ、半端ない躍動感、さらにそこに端正で伸びのある歌声が加わることで、ポップ感により磨きがかかってる。聴きやすく、ノリやすい。そしてライヴの質も高い。人気を獲得し始めているのは、やはりこういうところがしっかりしているからだろう。
ラストには伝家の宝刀である随一のダンス・キラー・チューン「Ambling Alp」で縦にも横にも大きく揺らし続け、レッドマーキーをとてつもないダンス・ホールへと変貌させてライヴは終了した。予想以上に1stからの曲が多く感じたが、現在と過去の差異を感じながら、彼等の変貌が見えてきたライヴで面白いように思えた。
写真:熊沢泉
文:伊藤卓也