エレクトロ大会の様相を呈する二日目の深夜レッドマーキー。その二番手を務めるのは、過去の出演や岩盤ナイトでの実績により、すでにフジロッカーズにしっかり認知されているデックスピストルズである。しかも今回はジャパニーズヒップホップの頂点に立つ男、ジブラの客演も予告されている。踊り足りない人、極上のBGMと共に二日目の反省会をする人、そして「デックスピストルズとジブラで何すんだ?」という未曾有の期待などが交錯し、集まった人の数は当然のようにレッドマーキーの屋根に収まりきらない人でにぎわった。
DJダルマとマーの二人のほか、仲間のロックと自らのレーベルからロックトラックスクルーも助太刀し、6人が横並びに卓を触る格好となったこの日のステージ。ステージの上でどのような役割分担があるかはうかがい知ることが出来ないが、なるほどDJひとりがレコードをつなぐ以上の音が生まれていることは確かだ。シンセとサンプリング、そしてビートが面白いほど表情を豊かにし、盛り上がりどころを次々にと演出していく。
数曲を披露したのち、早々にあの男が現れた。意外にも初登場となるジブラだったが、その姿は圧倒的というよりほかない。いつもとは違うビートも早々と乗りこなし、その上で煽り引っ張る一本のマイクの力強さ。そしてフロアの求心力がそのまま形となったかのような盛り上がりである。披露した「FIRE」という曲名そのままに、彼はフロアに火をつけた。曲の終わりと共にジブラは引っ込み、それからはロッキンエレクトロビーツにMCを交えてのヒップホップエッセンスを残した展開に突入。客演者も次々に参上して「NEW JACK HOSUE」など楽曲をプレイ、下世話なくらいにアゲていくスタイルでフロアの温度を上げ続けた。
後半になり、再びジブラが登場。初登場時のTシャツ姿とは違い、襟付きシャツにネクタイ、そしてなぜか演説台もセットされる。そこで披露されたのは、え、演説??!!デックスピストルズのサウンドとジブラのアジテーションとで構成される「BAMN」が、レッドマーキーでも公開された。おそらく台本が書かれているiPadを片手に、「日本のオリジナルなダンスミュージックを!」とただ弁を振るうジブラの姿は、ダンスミュージックに踊らされたい人からしてみれば戸惑いが生じてもおかしくない光景であった。しかしそこを確かな盛り上がりにするのは彼の硬派な姿勢と、その後ろで拍手を送るDJダルマなど、デックスピストルズクルーのバックアップがあってこそだろう。まさにオリジナルな時間を演出したデックスピストルズのステージは、盛り上がりをそのまま次に引継ぎ、二日目の夜が更けていった。
写真:古川喜隆