ブライアン・バートン(ルイスじゃないよ)ってどこかで聞いたことがあると思ったら、ナールズ・バークレイのデンジャー・マウスのことだったのか!その彼がシンズのフロントマン、ジェームズ・マーサーと結成したのが、このブロークン・ベルズ。
今年は別名義ユニットやグループが多く、こんな風にアレ?どこかで聞いたぞ?と思うことがしょっちゅう。また、プロデューサーで名をあげた人々がバンドとして続々登場しているのも今年のフジロックの特徴。音楽業界でこういう現象が多発するところの意味とは何だろう?不景気で政治も将来も雲行きが怪しい世界情勢の中、音楽がどんどん保守的になっていく。どこかで聞いたような歌詞、どこかで聞いたようなリフ、どこかで見たようなフロントマン…そんな中で良質な本物が、何とか生まれようと、もがいているのかもしれない。
ところでシンズと言えばUKインディーのカリスマバンド。私はあまり知識がないのだが、ジェームズのボーカルが美しく聴き入ってしまう。デンジャーマウスのもじゃもじゃ頭はドラム・セットからちらちらと。
ロック、R&Bの中にフォークの香りがするサウンドは心地よく踊れる。日曜昼間のフェスにはもってこいの軽やかさで、外は雨だけどマーキーの中はひまわりと太陽の幻覚が見えてきそう。夏の真昼がぴったり似合う、ちょっとメランコリックなサウンドは、ステージでも眩しい光を放っている。何か間違いが起こっても「みんな夏の太陽が悪いんだ」で済んでしまいそうな、そんな投げやり感も見え隠れする。聴きやすいフレーズに一筋縄ではいかないような“あく”を持っている…そんな印象。あ~夕暮れのホワイトあたりで一杯ひっかけながら見たかったかも!
3月にアルバムを発売してから北米ツアーに乗り出し、今回のフジロック。既にセカンドアルバムの制作が決定しているという。しかもバンド名も変わるかもしれないというユルさ。バンドとしては日が浅いけれど、さすが売れっ子プロデューサーとインディの重鎮の余裕と見た。決して華やかなバンドではないかもしれないけれど、身軽な製作意欲に期待!
写真:前田博史
文:mimi