VATO NEGRO

Tag:,,

7/31 03:28  Twitterに投稿する


 凄まじい。鳥肌が立つ。ホワイトステージに登場したVATO NEGRO(ヴァットウ・ニグロ)は、マーズ・ヴォルタのベーシストであるホアン・アルデレッテが作った3人組ユニット。ホアンと、ドラマーと、ギター兼キーボード兼エフェクト担当から成る。ギタリストはやせ形のメガネ君で、妙に上手い日本語で挨拶する。そして、演奏が始まると「うぉぉぉぉおおおお、これはキング・クリムゾンじゃないのか!」と思ってしまった。怒涛のごとく押し寄せてくる迫力のドラム、さまざまな奏法を駆使し、ダブっぽいエフェクトをかけるギタリスト、そしてうねうねとごっつい音を出すベースは、キング・クリムゾンとか、バトルスを思わせるのだ。

 特にドラマー。最初から最後まで、ほぼドラムソロですか? というくらい手数の多いドラムを叩く。キング・クリムゾンでいえば、繊細なビル・ブラッフォードでなく、パワー系も得意とするパット・マステロットという感じだろうか。とにかくドラムのすごさに持っていかれた。そして、メガネ君のギタリストは、マイクに向かって「あたたたたたたたたたたたたたたたたたたぁぁぁぁ」と叫び、それにエコーをかけて何度も反復させたり、ギターのブリッジよりも下の個所を弾いてキンキンした音を出しそれをサンプリングしてリフとして使うという芸当もやってのけた。キング・クリムゾンでいえば、エイドリアン・ブリュの役回りか。そのメガネ君は、MCにまでエコーをかけていた。このようにハードでゴリゴリしたプログレッシヴ・ロックとダブを融合させたようなユニークで、かつ攻撃的な音を作っていた。

 お客さんたちは、意外にもホワイトステージを埋めて、ステージ前は人がたくさんいた。変拍子に次ぐ変拍子で、わかりやすい踊れるビートが続いていくバンドでないため、人がどんどん増えていったとか、通り過ぎる予定のお客さんたちの足を止めさせるとかまではなかったけども、約40分間、獰猛な怪物が暴れ回るかのような世界を、これでもかっていうくらい繰り出してきて、立ち尽くすお客さんたちを圧倒したのであった。

写真:中島たくみ
文:イケダノブユキ