予想を遥かに超える凄まじい爆発力だった。2年前にミッドナイト・ジャガーノーツとのツーマン・ライヴで目撃した時は、あどけないながらも性急なビートと緻密な構成力で踊れるロックを表現していたが、よもやここまでの進化を遂げているとは驚くほかない。踊れるロックよりも深遠なるスケールを広げた最新作『トータル・ライフ・フォーエヴァー』が飛躍的進化の伏線になっていることは確かだが、ライヴでは1stの踊れる要素と2ndのスケール観と深みが見事なまでに融合しあう、迫力のステージを披露してくれた。
細かく丹念なギターワークが海のように深く広い世界観を編みこんでいく「Total Life Forever」からライヴはスタート。驚くほどにメランコリックな波動が紡がれる中で、そこに繊細に溶け込むVo&Gのヤニスの歌声が意識を妙に引っ張り出してくる。続けざまの「Cassius」では、快楽中枢を直に刺激する踊れるロックへとすぐさま仕様変更。2年前に体験したときとは、段違いの強靭なアンサンブルとグルーヴが強烈に襲いかかってくる。1stの曲では性急なビートで畳みかけ、2ndではじっくりと聴かせる、そういった構図が間違いなく存在したが、その相互補完によって昂揚と快感は一層増幅される仕組みになっていた。緻密な構成に基づきながらも、客席に向いたエネルギッシュな演奏もそれに拍車をかけていたように思う。「Red Socks Pugie」ではダイナミックなアレンジが施されていて、よりグルーヴィな演奏に昂揚感はさらに高まることに。ライヴ・バンドとしての進化/深化はこういったところからも伺えた。
特に楽しみにしていた「Spanish Sahara」では、見事なまでのアンサンブルに鳥肌が立った。丁寧に紡がれた強く優しい音が触れ合い、密に融合しあって、美しいエモーションとミステリアスな光で覆われた奇跡のような世界を描いていく。この色鮮やかな音の波動がまた心を揺さぶる。徐々にカタルシスへと導くような大らかな空間がそこにはあった。
終盤の「Electric Bloom」では、ヤニスがタムで加勢しての怒涛のリズム乱れ打ちが、以前見たときよりも遥かにパワーアップを遂げていたし、最後に演奏された「Two Step, Twice」ではテクニカルかつスリリングなバンド・サウンドがクライマックスで苗場の空に轟く爆音へと発展し、昂揚の臨界点を超えた。鳥肌が立つ圧巻のラストに、客席からは満足げな表情がこぼれていた。文句なしのライヴと言いたいぐらいの出来だったと思う。しかしながら、こんなスゲーことをやってる中で、ヤニスが5,6mはあるスピーカーによじ登って観客を煽るという、やんちゃな姿を見せていたのも印象深い。若くやんちゃな部分がまだまだ顔を出す辺りには、妙なうれしさを覚えたりもした。
緻密な構成力とセンス、そして静・動と硬軟のコントラスト生かしながら、ホワイト・ステージに集まった人々の熱を最大限にまで高めたFoals。ライヴ・バンドとして予想を超える著しい成長を感じさせたライヴに出会わせてくれたことを本当に感激したい。個人的にもフジで見た数々のライヴの中でも強く思い出に残るステージのひとつだった。
写真:古川喜隆
文:伊藤卓也