ONE DAY AS A LION

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7/31 09:33  Twitterに投稿する

開演前。ホワイトステージ周辺からは「ざわ…ざわ……」という音が聞こえてきそうだ。クロマニヨンズ終演直後に突如降り始めた雨がこれまでの熱気をリセットしてもなお、満員のオーディエンスの体の奥から湧き上がる期待と興奮が漏れて止まない。若干の緊張も交えて静まり返っているのに、彼ら彼女らの内に秘めた気持ちがまるで音ととして聞こえてくるようで、開演前の空気はなにやら落ち着かないざわめきがあった。

15分押しの後、出てきたのはまず韓国の楽器工場の従業員らによる解雇反対演説。肩透かしを食いながらも「レイジやワンデイアズアライオンも支援しています」の言葉に大きな反応を返すオーディエンスがいた。そんなこんなの待ち切れなさの限界直前、サポートメンバーのジョセフ、元マーズボルタのセオドア、そしてレイジアゲインストザマシーンのザックデラロッチャが現れた。ドラム、キーボード、そしてボーカルの3人が横並び。過剰な照明の演出も、大げさなSEもない、無骨なステージセットである。

ギミックに富んだ音、変則的なリズム、メロディーが入るボーカル…レイジの違いが分かりやすい「Ocean View」がフジロック最初の音だった。ロックの常識であればギターが担当するはずの歪みがかったキーボードの音や、力強くあれど緻密なドラミングの上を弾むザックのラップは、当たり前ながらあのザックそのものであった。髪をバッサバッサと揺らしながら眉間と口角をしわ寄せながら、搾り出してぶつけられるライム。期待どおりの力強さと荒々しさを浴びながら、オーディエンスは高揚以外に何ができよう。

曲間にザックの笑顔や日本語MCなんかも挟みながら、ステージが進行していく。燃え尽きるその時を目指して轟々と音が鳴りもみくちゃになるというよりは、知的発見と感嘆を同時に与えてくれるようなライヴである。キーボードとドラムとマイクだけで構成される3ピースということは信じられないままで、それでも音は力強いという不思議。大きなモッシュピットが生まれたりはしないが、そぼ降る雨も後に蒸気として上っていく。さあ次は何を見せてくれるんだ?!そんな期待を幾度か繰り返したところでライヴは終了。演奏されたのは8曲であった。

たった1つのEPだけでトリ前という時間帯、そして雨でも一向に引かなかった混雑。そんな指折りの注目度となった40分のステージは短くもあれど、知的興奮を満たすには十分だった。青白い炎が我々の期待を焦がしつくし、そして支配した夜の出来事である。

写真:深野輝美